Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-




 エルマはちらりと隣に立つラグを見上げた。


その視線を見返し、ラグは微笑む。エルマの好きにすればいいよ、と言うように。



 エルマの腹は決まった。



「わかりました。ぜひ」



 低く言ったエルマに、ディネロは「そうか」と、どこか安心したように小さく笑った。



「あっちに馬車を待たせてある。……あ、だがおまえたちは馬を連れているのか。どうしたものかな……」



「わたしたちは馬で追いかけましょう」



「いや、それはまずいんだ」



 エルマの提案をきっぱりと断ったディネロに、エルマは「なぜ?」と首を傾げた。



その目にはっきりと不審の色が浮かんでいるのを見て、ディネロは慌てたように「いや、違うんだ」と弁明する。



「別に、逃げないように、とか、監視しようとか、そういう訳ではないんだ。ただ、おまえを隠さなくてはならないんだ」