すぐにその一房をつかまえて、フードに押し込む。

そして、誰か見ただろうかと辺りをきょろきょろと見渡して、――エルマは一人の男と目が合った。


(まずい)



 嫌な汗が背中にじわりと浮かぶ。

その男は驚いたように目を見張って、エルマを見ていた。



 ルドリアか、ルドリアの偽物。

今の状況で、どちらと思われてもまずいことになるのは明白だ。

――もし、騒がれでもしたら。



 エルマとラグの焦りを知ってか知らずか、男はただエルマを見ていた。

そして、しばらくすると。



 どこかふらふらとしたおぼつかない足取りで、男が一歩、エルマの方へ踏み出した。



「うわ、こっち来た」と、ラグが小さく呟く。

そして、どうする?と尋ねるようにエルマに目配せをした。



 エルマはただ首を横に振った。

そこで逃げたら余計に目立つ。それに、男の様子が変だった。