*3*


 シュタイン王城から馬で駆けること、ほぼ丸一日。



 ようやく国境の街にたどり着いたエルマは、その有様に愕然とした。



 一見すると、普通の街だ。だが、街の空気が重かった。


よく見れば、至る所で罵り合いの喧嘩が勃発していた。


ある所ではルドリア失踪の責の全てはルイーネにあると演説する者もあった。



 エルマはリアから降りて、深くうつむきながら歩いた。

髪色を見られてはまずいからだ。



ラグはその手を引きながら宿屋を探していた。



「エルマ、あそこへ入ろう」



 ラグが言って指差した先を、エルマが見る。


ずいぶんと立派な門構えで、馬屋もついた宿だ。


宿代はかなり高そうだが、それはラシェルからもらっていたから心配はなかった。



 そうだな、と、エルマが頷きかけたとき。



 一陣、強い風が吹いた。マントのフードがふわりと浮く。


頭が露わになる前に、エルマは慌ててフードを押さえつけた。


だがそのはずみで髪が一房フードから出てしまった。