エルマの言葉に、二人が頷いた。



「お二人もお気をつけて」と言ったフシルに笑みを返し、エルマはマントのフードを被った。


ルドリアを巡って暴動が起きている今、ここからは緑の髪を隠さなければいけない。



 エルマがリアの背をぽんぽんと叩くと、リアが走り出す。

その後ろにラグが続いた。



 城の庭を駆け、そのまま城門を出ようとしたとき。



「――エルマ!」



 上から呼ぶ声がした。

間違えるはずもない、深みのある低い声。



 エルマは馬を駆けたまま、振り返った。



 王城の最上階の部屋に二つの人影を見つけた。

髪色でわかる。ラシェルと、彼を支えているのはメオラだ。



 だんだん遠ざかっていく赤髪の人影がふいに左手で腰の長剣を抜いて、まるで天を突き刺すように、切っ先を上に向けて掲げ持った。

その柄には、彼の弟の髪を結んでいたものであろう赤い紐が結わえ付けられていた。



 エルマはそれをじっと見つめ、ただ一度頷き、前に向き直った。



 それはエルマを拾い養った一族の慣習だ。

エルマが一族を去るときに皆から送られた激励。



――武運を。