「あのね、出発の前に、フシルが一度話したいって。伝えることがあるみたい。リアの前で待ってるから、行ってあげて」



「わかった」



 エルマは頷いて、不安げな顔をしたメオラの頭をそっと撫でた。



「そんなに心配しなくても、大丈夫だ。ラシェルとカルと、一緒に待っていてくれ」



 そう言うと、メオラはすこし笑って頷いた。



「じゃあ、行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい」



「例のものはラグに渡した。……必ず、無事に戻って来い」



 ラシェルの真摯な眼差しを見返して、エルマは頷く。

そして小さく微笑むと、二人に背を向けて部屋を出て行った。



 二人は見送りには来ない。

エルマが来るなと言ったのだ。

まだ体が本調子ではないラシェルには、メオラがついていないといけないから。



 部屋を出ると、待たせていたラグがエルマの隣に並ぶ。



「書状は」と短く尋ねるエルマに、ラグも「持ってる」と短く答えた。



 エルマはよし、と小さく呟いて、歩く歩幅を大きくする。



「行こうか。――ルイーネへ」