(本当に、困ったことになった……)



 ルイーネには、噂はもう伝わってしまっただろう。


ルイーネに今のところ動きはないが、それも時間の問題だ。ラシェルはこれからどうするのだろう。


――自分は、どうすればいいのだろう。



(リヒターは、なんであんなことを……)



 わからない。リヒターは、エルマに自由を返すと言った。今までの礼だ、と。


だが、それだけの理由でエルマがルドリアでないと明かしたわけではないだろう。



 国を――敬愛する兄が治めることになる国を、そして兄を、何よりも第一に考えていた。



 そんなリヒターが、エルマに自由を返すためだけに、シュタインを危機に陥れるようなことをするわけがない。



 考えても考えても、エルマにはわからなかった。



 長いことそうして考え事をしていたエルマは、ふと喉の渇きを覚えて、水でももらおうと立ち上がる。

――その知らせが届いたのは、ちょうどそのとき。