*第四章 追い風と一輪の花 1*


 リヒターが処刑された後、王都ではラシェルの意向で盛大な葬儀が行われた。



 死罪になった罪人の葬儀は行われないのがシュタインの慣例であったため、異例の事態ではあったが、誰一人として反対しなかった。


リヒターを邪魔に思うラシェル派の貴族は念願が叶って満足していたし、他の者も、昏睡している間に弟を失ったラシェルの痛みに追い打ちをかけることなどできなかったのだ。



 葬儀の準備に追われて悲しむ間もなく動きまわっていたエルマとラシェルがやっと一息ついたのが、処刑から五日目、つまりは葬儀を執り行なった翌日のこと。



 まだ傷が治っていないのに無理をしたラシェルは、葬儀が終わると同時にメオラに叱られて、今は政務をイロとレガロに任せて自室で休んでいる。


メオラは城医であるレガロに任され、ラシェルの看病をしている。



 エルマは自室で窓の外を見ていた。