それから大きく息を吸って、

「静粛に!!」

 と、エルマがこれまで聞いたことのないような大きな声で怒鳴った。



 しん、と静まり返った処刑場の中、イロが羊皮紙を広げるガサガサという音がやけに大きく響く。



 イロが大音声でリヒターの罪状を読み上げるのを、エルマは黙って聞いていた。

民衆に何も悟られないために表情だけは変えず、しかし力を込めすぎた指先は白く染まっていた。



「……以上の罪状を以って、この者、リヒター・セルディーク第二王子を、国法に則り斬首刑に処す!」



 空高く響いたその声が消えても、誰一人、声を上げる者はなかった。



 静かな処刑場の中心で、イロは痛ましげな表情で目の前のリヒターに向き合う。



「王子、何か言い残すことは」



 問われたリヒターは「んー、そうだなあ」と数秒考えると、


「皆に言い残すことが一つある。でもその前に、姫と少しだけ話をしてもいいかな」

 と言って、エルマの方を見た。