小さく頷いたラシェルの口元へグラスを持っていって飲ませてやると、ラシェルの顔にいくらか赤みが戻った。



 目が覚めたばかりのラシェルに、リヒターのことを話すべきだろうか。

そんなメオラの逡巡を見透かしたように、水を飲んで落ち着いたラシェルは静かな声で「メオラ」と呼んだ。



「リヒターはどうしてる?」



 胸の奥が軋むような音を立てるのをメオラは聞いた。



 ぎゅっと唇を噛み、ともすれば溢れそうになる涙をこらえるため、目に力を込める。



 メオラのただならぬ様子に何かあると感じたのか、ラシェルの目がみるみる険しくなる。



 数秒の沈黙の後、メオラは覚悟を決めてラシェルの目を見た。



「ラシェル、落ち着いて聞いてほしいの――」