――わたし、こんなのばっかりだ。



 この前だって、そうだった。

一人でラシェルの寝顔を見ながら、とりとめもないことをぐるぐる考えて。こんなのばかり――もううんざりだ。「いいかげん起きなさいよ、ばか!」



 メオラは小さく怒鳴って、ラシェルの額を軽く指で弾く。



 もちろん、そんなことでラシェルが目を覚ますとは思っていなかった。

――思って、いなかったのに。



「………………いっ、てぇ……」



 ラシェルの唇が薄く開いて、かすれた声を上げる。


メオラは驚きに一瞬身を引き、起き上がろうとするラシェルに慌てて駆け寄り、その背に手をそっと添えた。



「ラシェル、気分はどう? わたしがわかるわよね?」



「ああ、傷が痛むが……他はなんともない。すまないな、メオラ」



 答える声はかすれてはいるが、はっきりとしている。

メオラはほっと息をついて、文机に置いてあったグラスを手に取った。



「ラシェル、お水飲める?」