ラシェルの寝顔を見つめながら、誰に言うでもなく、メオラは呟いた。



――今ごろ、エルマはとっくに処刑場に着いているだろう。

処刑はもう行われただろうか。リヒターは、どうなっただろう。



 ぐるぐる、と、考えても仕方のないことが頭の中を回り続ける。


 溜め息を一つついて、メオラは窓の外に目を遣った。


(わたし、どうしちゃったんだろう……)



 メオラはわかっていた。エルマはラシェルを見ていてくれとメオラに言ったが、それは命令ではない。

メオラが嫌と言っても、エルマは怒ることもせずに他の者に頼んだだろう。



 以前の自分なら、ここで素直にラシェルの元に残ったりはしなかった。


エルマに何と言われても、エルマについて行った。


メオラにとって何より大切なのは、唯一の肉親であるラグと恩人であるエルマだったはずなのに。



「……なんで、あなたのことを放っておけないのかな」



 ラシェル、と、メオラは寝顔に呼びかける。

ラシェル。わたしやエルマをアルの民から遠ざけた人。

今エルマが辛い思いをしている元凶。