そしてこの日、リヒターの処刑が行われる。

その処刑に、エルマは証人として立ち会うことになっているのだ。



 エルマが城へ戻ってからずっと姿の見えなかったリーラは、聞けば先月新王の立ったウィオンへ大使として訪問しているという。


結果、シュタイン王家の血は引いていないが、第一王子妃であるエルマが最も王家の中枢にあるとして、病床の国王と意識のないラシェルの名代として、処刑の立会いを求められたのだ。



(なんで、そばにいられないの)


 メオラが悔しさに唇を噛んだことを、知る者は誰もいない。


(残酷だわ)



 リヒターが処刑されることを、ラシェルやフシルと同じくらいに望まないエルマに、処刑に立ち会わせるなど。



 その立場を、代わってやれない自分が、悔しい。



 自分にできることは、目を覚まさないラシェルの看病をすることだけ。



 自分の荷はこんなに軽いのに、エルマの重い荷を代わりに持つことができないことが、悔しい。



「エルマはいつも、背負いすぎるのよ」