ぐるぐる、と。黒くもやもやした塊が心の内を回り続ける。

ザラザラした不安が息苦しいまでに胸を満たして、自分がどうするべきなのか考えなくてはいけないのに、上手く頭が回らない。



 リヒターを救いたくて、リヒターのところへ連れて行け、と言ったのはほとんど反射だった。

会えばなにか変わるのではないか、と――そんなわけはないのに。



――どうやったら、リヒターを救える。



 力ずくで牢から出して逃がすのでは駄目だ。

リヒターが胸を張って、ラシェルの隣に立てるようにならなければ、意味がない。



 重い沈黙の中。


「ここです」


 ふいにイロの声が地下牢に響いて、全員が足を止めた。



 そこは地下牢の最果て。

最も奥の、最も闇の深いところに、その牢はあった。



 エルマは黙ったまま、手に持ったランプを目の前にかざす。

ぼんやりと浮かび上がった鉄柵の向こうで、よく知った顔が――笑っていた。



「やあ、エルマにイロ。カルとラグも来たんだね」



 今日は来客が多いな、と、リヒターはまったくいつもと変わらない笑みを浮かべて言う。