*11*


 昏睡しているラシェルをレガロとメオラに預け、イロとエルマ、カル、そしてラグはリヒターのいる牢を目指していた。



 暗闇の中を一歩進むごとに、壁に映った四つの影が揺れる。

頼りないランプを持って歩くイロと、それに続く三人は始終無言のままだった。



 コツ、コツ、と。地下の闇に靴音だけが虚ろに響く。



「……王族でも、地下牢に入れられることなんてあるんだな」



 前を歩くエルマに、カルが小声で言った。



「ありますとも」



 そう答えたのはイロだ。



「国によっては、王族が何をしても罪に問われないところもありますが、シュタインは違う。

ここでは、王族といえども法に背けば裁かれる。三代前の国王がそう定めたのです」



 相変わらず憮然とした表情で言ったイロだが、その声音はどこか誇らしげだ。



 素晴らしい制度だと、エルマも思う。

王族の理不尽によって国を追われた者を幾人もアルの仲間に迎え入れてきたエルマには、その制度がどれだけ稀有で優れたものか、よくわかる。



 だが、思わずにいられなかった。

――その制度がなければ、リヒターを今すぐにでも救えるのに、と。