「ラシェル殿下を傷つけた剣の毒、殿下の手当てをした医務官によると、この国では手に入らないものでした。

そこで、夏市で薬や毒を扱っている商人を洗いざらい調べてみたところ、王城の兵に例の毒を売った商人が見つかりました。

その商人の懐から出てきたのが、これです」



 そう言って、イロがエルマに手渡したのは、白い布だった。



 受け取ってみると布にしてはかすかに重く、なにか硬い感触がする。イロに促されるままにそれを開くと、中から現れたのは細かい模様の彫られた銀のボタンだった。



「リヒター王子の上着のボタンです。純銀のとても高価なもので、商人はこれと引き換えに毒を取引したと言っておりました」



 まさか、と、エルマの口から渇いた声がもれた。その顔がみるみる強張っていく。



「まさか、あの刺客がリヒターの送り込んだものだったと言いたいのか!?」



 蒼白になったエルマに、イロは冷静に頷いた。