感情の読めない真っ白な顔をメオラに向けながら、ラシェルは右手をそっと持ち上げる。

そして、からっぽの左腕に触れた。



 ぎゅっと、右手で左の袖をつかんで。



「やっぱり、ないのか」



 かすれた声で、ラシェルは呟いた。



 心臓を握られたように胸がいたんだ。

それを顔に出すまいと必死に堪えて、メオラは「ごめん」と呟く。



「わたしが、エルマに言ったの。腕を切り落とさないとラシェルが死んじゃうから、って……だから」



 エルマを、どうか恨まないで。



 そう言おうとしたメオラの唇に、突然、ラシェルの人差し指がそっと触れた。



「やめてくれ。メオラのせいでも、エルマのせいでもないだろう」



「でも……」



「おれが油断していたのが悪いんだから、自業自得だ。それに、メオラが引っ張ってくれなかったら腕一本ではすまなかったかもしれない」



 そうだろう、と、ラシェルは柔らかく微笑む。

その白い顔を見ているうちに、メオラは考えるより先に言葉を発していた。



「あなた、このままアルの民になってしまえばいいのに」



 唐突にそう言ったメオラを、ラシェルは不思議そうな顔で見つめる。

目覚めたばかりだからだろうか、その顔は心なしかすこし眩しそうだ。