せめてイロに目通りを、とエルマが願い出ても、カリエンテ様はお忙しいと言って、まるで取り合ってくれない。

そして今に至るまで、エルマたちは仕方なく待ちぼうけを食らっている。



「ねえ、わたし、そろそろ腹が立ってきたわ」



 いつも小鳥の鳴き声のように高い声を低くして、メオラが言う。

エルマは表情を変えなかったが、カルの首が力なく前に傾いだ。



「せめてイロに会えるといいんだけどな……」



 商人と役人でごったがえした城門の中を覗き込みながら、エルマは言った。メオラは不服そうに唇を尖らせる。



「イロだって、さっきのお役人の似たようなものよ、きっと」



「さっき、ねえ……」



 カルがぼやく。

確かに、二刻前は「さっき」とは言えないな、と、エルマは内心で頷いた。



 長いこと暑い中で待ちぼうけを食らったものだがら、二人ともぐったりとして表情が険しくなっていた。


そろそろなんとかしないとな、とエルマは思いながら、城門の内側を睨みつけていた。



 イロを探しているのだ。

役人などに相手をしてもらえるとは、エルマははなから思っていなかった。

イロを見つけたら商人に紛れて城内へ入り、話を聞いてもらえればいい。



 イロのことはカームから聞いていた。

異国風の浅黒い男だ、見ればすぐにわかる、と。



 しばらく城門の中を覗き込んでいたエルマは、役人たちに囲まれてこちらへ歩いてくる男を見つけた。

身なりが良く、肌が浅黒い。