メオラの言葉に、カルやラグだけでなく、エルマまでも明らかな迷いを顔に浮かべた。



 三人は武人だ。ラシェルも、武人の性に近い。彼は武術に長け、武術を愛している。

ラグの技に感動していた、あの顔を見れば誰だってそれがわかる。



――武人にとって、手足の損失は死を意味する。



 もう戦えなくなる、ということは、武人にとっては死に等しいのだ。



 そんなことは、エルマやラグ、カルに囲まれて生きてきたメオラにもよくわかっている。



 だが、それでもメオラは「エルマ、お願い」と言葉を重ねる。



「腕を失うことが武人にとってどれほどの痛手だとしても、ラシェルの命を脅かす腕なら必要ないわ」



 エルマは思わず、あまりの痛みに気を失っていたラシェルの顔を見る。



「今切れば、間に合うのか」



 静かに問うエルマに、メオラは頷く。

それを見て、エルマは覚悟を決めた。



 ラシェルの腰に差してあった長剣を引き抜いて振り上げ、そしてそれを勢いよく振り下ろす。

――骨を断つ、嫌な感触が手に残った。



 腕が切り離された肩を、メオラが手際良く止血して布を包帯代わりに巻きつけていく。



 それを手伝うラグとカルが時折気遣うような目でエルマを見るのにも気づかず、エルマは剣の柄をきつく握りしめて、強く、強く唇を噛みしめていた。