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 山の木々を抜けて川辺に出ると、ちょうどラシェルが鞘に剣を納めたところだった。



 地面には怪我をして気を失った刺客がごろごろ倒れている。



「終わったのか?」



 とエルマが訊くと、ラシェルは頷いた。



「今、加勢に行こうとしていたところだったんだが……エルマ一人で大丈夫だったみたいだな」



 まあな、とエルマが言うと、ラシェルは「それにしても、エルマもラグもカルも恐るべき武勇だな。アルの民は皆そうなのか?」と、感心したような呆れたような複雑な表情を浮かべて言った。



「皆、でもないさ。メオラはまったく戦えないし。腕に覚えのあるのはわたしとカル、ラグにじい様と、テオと……あとは四、五人くらいかな」



 メオラに肩の止血をしてもらいながら、エルマが答えた。



「エルマの槍さばきが見られなかったのが残念だ」



 と、ラシェルは本当に残念そうに言う。

それに笑い返して、エルマは「でも、ラグの短剣さばきは見られたんだろう?」と言った。



「見たぞ! 本当に凄まじかった。短剣一本で長剣と渡り合ってあっという間に倒したと思ったら、おれに斬りかかろうとした刺客の背に短剣を投げて命中させてしまった。しかもきちんと急所を避けて、だ!」