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 高く上った日がジリジリと街道を焼く昼下がり、エルマとカル、メオラは、それぞれ馬に乗ってシュロス城門の前に控えていた。



 目の前には商人たちの行列が、尾の見えないほど長く並んでいる。

皆、夏市での営業許可証を申請しに来た者たちだ。



 エルマはその光景を、去年はカームに連れられて見たことがある。

ただ、去年と大きく違うことは、その場にカームがいないことと、商人たちの衣装や天幕が、赤と緑を基調としていることだ。

それは、シュタイン・ルイーネ両国の婚礼を祝してのものだった。



 シュタイン王国第一王子、ラシェル・セルディークと、ルイーネ王国第一王女、ルドリア・アンバーとの婚礼が、一ヶ月後に迫っているのだ。



 赤い髪のラシェルと、緑の髪のルドリア。

花嫁花婿の髪色にちなんで、今年の市に集まる商人たちは、わざわざ赤と緑の衣装を新調し、天幕を染め、荷台を塗ったのだ。



 シュロス城門開門と同時、ほぼ一番乗りに到着したエルマたちだか、城内へ入ることも許されないまま、もう二刻(訳四時間)は経っている。



「お前たちとの話し合いは長引きそうだから、他の商人が終わるまで待っていろ」



 エルマたちが到着した頃、宰相イロに確かめることもせずに、役人はそう言った。


そしてエルマたちを待機場所に案内するわけでもなく、城内へ帰っていった。


虚仮にされているのは明らかだ。