「アルの民の女は、みんな植物には詳しいのよ。どの草が食べられて、どんな効能があるのか知っておかないと生きていけないから。……まあ、エルマは狩猟担当だけど」



「そうだな」と、エルマは苦笑した。

「わたしは植物のことはさっぱりわからない」



 幼い頃からカームに弓や剣技、体術を教えられてきたエルマは、女たちに混じって野草や木の実を集めるより、男たちと一緒に山を駆け巡って獣を捕らえるほうが性に合うのだ。



「だから、」



 ふいに、エルマが笑みを引っ込めた。



「土の異変には敏感なんだ。獣の足跡を探す癖が染み付いているから」



「だな」と、カルが同調する。

エルマが気づいたものに、カルも同様に気づいていたのだ。



 エルマはメオラの足元のマリネラ草を指差す。



「そこ、土がすこし盛り上がっている。……だれかが草を根ごと引き抜いた跡だ」



 領主の館で広まっているマリネラ毒は井戸水に溶けているのではない。

――だれもがそのことに思い至って、険しい顔をした。



「ここにマリネラ草があることをだれかが知っていて、その毒を意図的に飲み水に入れてまわってる可能性がある――そういうことになるね」



 ラグが言うが、ラシェルは不審そうに眉根を寄せる。