*7*


 翌日、ラシェルとエルマ、カル、メオラ、そしてラグの五人は、エルマの説を確かめるために川の上流へ向かった。

カームとテオは屋敷に残って、屋敷の井戸水に毒があるのかどうかを調べている。



 領主の館の北側にそびえる山はなだらかで、それほど険しくない。

そのためアルの四人はもちろん、ラシェルも苦も無く登ることができた。

川沿いには色とりどりの花が咲き乱れ、一見するとのどかな光景――なのだが。



「つけられてるな」



 ふいに、エルマが言った。

その表情に険しさは無く、声は四人に聞こえる程度に大きく、尾行者に聞かれない程度に小さく調節されている。

――尾行に気づいたことを、尾行者に気取られないためだ。



 エルマの意図を正しく汲み取ったのだろう、ラシェルもまるで他愛ない会話でもするような顔で、「それは本当か」と小声で尋ねる。



「ああ。四、五人ってところか……。まだ襲ってくると決まったわけじゃない。とりあえずはこのまま様子を見よう」



 エルマの言葉にラシェルが頷く。

後の三人は何の反応も示さなかったが、これは三人ともエルマほど器用な真似ができないからだ。

下手に反応しようものなら尾行者に勘付かれてしまう。

三人にできるのは、とにかく表情を変えずに、何も言わないでいることだけだ。