(そんなことを気にしてたのか)



 カームの言ったことが本当だとすれば、エルマはルイーネ王家の王女であり、ウィオン王家に連なる者だということになる。

それはつまり、エルマがラグとメオラの恨むべき相手になる、ということだ。

それだけではなく、アルの一族の者は概して「王族」というものを嫌っている。


――要するにエルマは、自分がラグとメオラをはじめとするアルの一族の者たちに嫌われることを、恐れていたのだ。



「ばかだな、エルマ」



 小さく笑って、ラグはエルマの細い手首をつかんだ手をはなす。

そうしてそのまま腕を持ち上げて、エルマの頬を軽くつねった。



「……え、ちょっ、ラグ!?」


 困惑したようなエルマに、笑いを含んだ声でラグは言った。



「たしかに昔はウィオン王家を恨んでたけどさ、でも、今は全然」



「……本当?」



 泣きそうな声で言うエルマに、ラグは苦笑する。

普段は凛々しいのに時たま見せる彼女の弱さを、愛しいと思った。

――もうずっと昔から、思っていた。



「本当。だって、迫害されてヴェルフェリアに逃れて、――そのおかげでエルマに会えた」



 それに、と、ラグは続ける。