もぞり、と、ラグは居心地悪そうに身じろぎをする。


カームに呼ばれたから黙って聞いていたが、この話、果たしてエルマの了承なしに聞いてしまってよかったのだろうか。



 遠くで、ほう、と鳥の鳴く声がした。

ランプの炎が揺れて、エルマの顔に影を作る。



「わたし……」



 ふいに、エルマが呟いた。


そしてパッと立ち上がると、どこか困ったような笑みをラグに向けた。



「なんか、びっくりしたな。……疲れたし、部屋に戻るよ」



 そう言って、ラグの返事も待たずに部屋を出て行こうとする。


ラグは思わず立ち上がって、エルマの手首をつかんだ。


――呼び止めなければいけないような気が、した。



「ラグ……? どうしたんだ」



 怪訝な顔で言うエルマの手首を握ったまま、ラグはまっすぐにエルマの赤い瞳を見つめる。



「ちょっと、ラグ?」


「エルマさ、」


 慌てたようなエルマの言葉に被せて、ラグは言った。



「今、なんか変なことで悩んでるだろ」


「え……?」


「エルマはさ、笑うんだ。俺やメオラに心配かけないように笑って、たいていのことは一人で抱え込もうとする。

でも、エルマは自分で思ってるほど器用じゃないから、笑ってみたはいいけど、ちょっと困ったみたいな顔になる」