「ああ。今ではほとんど誰も信じていないが、昔……双子が生まれたら、後に生まれた方が悪魔の化身だっていう迷信があった。

だから後に生まれた方はすぐに殺すのが慣いだったが、まれにわが子を殺すことができず、どこかに捨ててくる親もいたらしい」



 カームが何を言いたいのか察して、エルマもラグも目を見張った。


「わたしが、ルドリア姫の双子の妹だと。そう言いたいんですか、じい様」



「ま、そういうことだな」と、カームは頷く。


「赤子のおまえを包んでいた産着、もう残っていないが、かなり質の良いものだった。あながち的外れでもないだろう」



 あまりのことにエルマは黙り込んだ。そんなエルマを労わるような目で見やって、カームは立ち上がる。



「俺の話はそんだけだ。おまえの出自のことだから、おまえにも知らせたほうがいいかと思ってな。

……まあ、おまえがどっかの姫さんだろうが何だろうが、俺の娘だってことは変わらねえ。それだけは覚えとけ」



 そう言って、カームはこれで話は終わりだとばかりに部屋から出て行ってしまった。


あとには黙り込んだエルマと、困ったような顔のラグが残された。



(えっと……、先代、なんで俺にもこの話聞かせたんだろう)