*6*


 薄暗い部屋に、ランプの灯りがゆらりと揺れる。



 カームの部屋に入ったエルマとラグは、促されるままに寝台に腰掛けた。



「それで、話とは?」



 エルマが切り出すと、カームは「たいした話じゃない」と言った。



「エルマ、前に第二王子が言っていたな。おまえとルドリア姫の顔がそっくりなんだと」



「はい。だからわたしが姫の代わりに」



 なぜ今さらそんなことを訊くのか、と不思議そうな顔をするエルマに、ラグが言う。



「それ、俺も気になってました。他人だったら、普通は本人と見間違えるほどに似るわけがない」



「そう」カームが頷く。

「他人じゃないかもしれない。ルドリア姫と」



「他人じゃ、ない? わたしが姫と血縁だとでも?」



 冗談だろう、とでも言いたげなエルマに、しかしカームは頷いた。



「ずっと忘れてたんだが……エルマ、おまえは知らんだろうが、このイスラ半島には古い慣習があってな。ずっと昔、俺がまだガキの頃に聞いた話だ」



「古い、慣習……?」