*5*


「しかしすごいな、エルマは」



 メオラと並んで廊下を歩きながら、ラシェルが言った。



「まだ推論にすぎないとはいえ、ここに来てたったの一日で病の原因の手がかりをつかんだ」



 心底嬉しそうにラシェルは言う。

メオラも笑って、「でしょ?」と言った。



「エルマって、本当に強くて賢くて、すごいでしょ」



 族長が誉められたことを我が事のように喜ぶメオラを見て、ラシェルは苦笑しながら頷く。



「そうだな。……おれは、何もできないでいたのに」



「……ラシェル?」



「おれの民を、ただでさえ迷惑をかけているエルマに救ってもらって、……情けねえな」



 ラシェルの自嘲的な笑みを、メオラは何も言えずに見つめた。

――かけるべき言葉が見つからなかった。



 黙り込んでしまったメオラに気づいて、ラシェルは「あ、わるい」と慌てたように謝る。



「今のはなしだ。そんな深刻そうな顔をしないでくれないか」



「べつに……深刻そうな顔なんて」



 してない。そう言いかけて、メオラはふと思い至る。