「川の水に誰かが毒を入れたとは考えにくい。

川の水は絶えず流れているんだから、これだけの被害を出すには犯人側も絶えず毒を入れ続けなければならない。

もしかしたらなにか仕掛けがしてあるのかもしれない。

……それについては、明日川の上流を見に行ってみよう」



 エルマの言葉に、全員が頷く。



「領主の館の井戸が危ないかどうかはわからないが、領主や使者も病にかかったことが気になる。

用心はしておくべきだろう。

――ラシェル、ギド殿に館の井戸を使わないように言ってくれるか」



「わかった」



 ラシェルは頷いた。



「メオラも行け」



 唐突に言ったのは、今まで黙って聞いていたカームだ。



「王子を一人にするな」



 その言葉に、メオラは不思議そうな顔をする。



「でも……、護衛ならカルや兄さんのほうが」



「カルとテオには村人たちに川の水を飲まないように触れ回ってもらう。

俺はエルマとラグに話があるから、とりあえず残りはくっついて行動しろって話だ。

領主の館で何か起こるとは思えんが、一人にはならねえほうがいいだろう」



 カームが言うと、メオラが納得したように頷く。



「では、任せた。皆十分に気をつけてくれ」



 エルマが言うと、それを合図に全員がそれぞれの仕事をこなしに動き出した。