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「感染はしないけど確実に広がっていく病、か」



 病に倒れた使者への見舞いも夕餉も済ませて、与えられた部屋へ戻ったエルマは、寝台に倒れ込んでそう呟いた。



「妙な話よね。聞いたことないわ、そんな流行病」



 隣の寝台に腰掛けたメオラが言う。

エルマとメオラは相部屋だ。

病人が多いため部屋が足りないのです、と、案内した女中はひどく申し訳なさそうに言っていたが、もちろん二人はまったく気にしていなかった。



「手掛かりがなさすぎるな。これだけ訊いてまわっても、病の原因の候補すら出てこない」



「だとしたらきっと日常的な出来事のなかに病の原因があるんでしょうけど、……そうすると、やっぱり突き止めるのが難しいわね」



「最初に病にかかった者は誰かと領主に訊いても、わからない、だもんな。誰からともなく一斉に病にかかっていった、って」



「それも、妙な話よね。そもそも本当に病なのか、それすらわからないわね」



 そうだなあ、となかば唸るように言って、エルマは起き上がった。

寝台に腰掛けたまま、窓の外の闇をじっと見つめる。



 突如として村に広がった病。

だれも原因に心当たりはなく、病人のそばにいても感染しないが、確実に広がっている。そもそも本当に病なのか――。



「…………え?」