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 馬車で駆けること、三日。



 首都シュロスのある、王家直轄のセルディーク領を抜け、その北隣のヴェルテ領を通り、一行はついに北端クランドル領にたどり着いた。



 アルの民がエルマの――ひいてはラシェルの味方であることを王妃側の人間に悟られないために、王城の近くにいるときは馬車を付かず離れずの距離で追っていたアルの者たちも、

ヴォルテ領に入る頃にはエルマたちに合流していた。



 ついてきたアルの者は、ラグ、カーム、テオの三人だ。

ちなみに、テオが受けもっていたミレイの護衛の仕事は他の者に代わってもらった。

カームやカルに次いで腕の立つテオをセダに連れてきたら心強いと考えたラグの配慮だ。



 七人の踏み入れたクランドル領セダは――ひどい有り様だった。



 畑の延々と続く農村の風景はヴォルテ領と変わりない。

だが、ヴォルテ領の農村にあった暖かなにぎやかさ、ほのぼのとした明るさが、クランドル領にはないのだ。



 道端で立ち止まって雑談に花を咲かせる農婦は見当たらない。

汗を流して麦畑を耕す男たちも、耕牛の周りで戯れる子供の姿も、見当たらない。水車は水が枯れて回らず、畑は荒れていた。



 天気は晴れているのに、村全体の空気がどんよりと暗い。