「……セダの件、どうするの」



 とたん、安堵の浮かんでいたラシェルの顔が険しくなった。



「連れて行くのは、無理、だろうな……。しかし毒を盛られるようなことになった以上、城においておくのも心配だ」



「そうね。こんなことがあったんじゃあ、城で出る食事にもうかうか手をつけていられない」



 メオラがそう言ったときだ。両手で包み込んだエルマの手がピクリと動いた。



「エルマ!?」



 メオラの呼びかけに応えるように、エルマのまつげがふるふると揺れて、白いまぶたがゆっくりと開かれた。



「エルマ、平気? 苦しくはない?」



 耳元で囁くようにして、メオラが問う。

薄く開けた目を数回ぱちぱちと瞬かせて、さなぎから蝶が出でるように、エルマはゆっくりと目を開けた。



「……メオラ……、わたしは、一体……」



 弱々しく名前を呼ぶ声がそれでも嬉しくて、メオラは思わずエルマの手を強く握った。



「お茶に毒が入っていたんですって。飲み込んだのが少量だったから、二、三日でよくなるそうよ」



「そうか……」かすれた声で、エルマは言う。

「……なら、セダには行けるな」



「エルマ、何を……」



 カルが驚愕の表情でエルマを見て言った。