ふらりと、傾いで崩れ落ちそうになったメオラの体を支えたのは、ラシェルだ。



「おい、大丈夫か」


「ええ、ありがとう」



 ラシェルと共にエルマの寝台のそばに寄って、床に膝をつく。


 まだ青白いエルマの顔色は、しかし倒れたときよりもは赤みが戻ってきていた。



 そっと、眠っているエルマの手を取る。

その手の甲に自分の額を押し当てて、メオラは深く深く息を吐いた。



「……よかった…………」



 無事で、本当によかった。大したことなくて、本当に。



 ガタン、と音がして振り向くと、カルとフシルが水汲みから帰ってきたところだった。

音は、カルの持った桶が壁に当たって立てたものだろう。


カルは桶をその場に置いて寝台に駆け寄ってきた。



「命に別状は無いって、レガロ様が」



 メオラが短く言うと、カルはなにも言わずに寝台に顔を突っ伏した。


その喉が細かく揺れて、聞き取れるかどうかの小さな嗚咽がメオラの耳に届く。

フシルは安堵したように小さく笑った。



 カルの嗚咽をメオラは聞こえないふりをして、そばに立っているラシェルを見上げた。