ガシャン、と、なにか硬いものが落ちる音。

続いてドサッとなにかが倒れる音がした。――エルマの部屋から。



 メオラとカルは一瞬顔を見合わせて、同時に駆け出した。



「エルマっ!」



 足の速いカルがメオラより先にエルマの部屋にたどり着き、勢いよくドアを開ける。


メオラもすぐに追いついて部屋を覗き込んだ。

――真っ先に目に入ったのは、床に広がった新緑の髪。



 寝台のわきに、エルマは倒れていた。

すこし離れたところには、床に落ちて割れたカップと、飛び散った茶色い液体。


なにが起きたのかわからず呆然としているメオラをおいて、カルが部屋の中に飛び込んだ。



「エルマ! おいエルマ、しっかりしろ!」



 カルが怒鳴りながら、生きているのかわからないほど青ざめたエルマの顔に手をかざす。



「息はしてるか。……おいメオラ! 医者呼んでこい!」



 ぐったりとしたエルマの体を抱き上げて、カルが怒鳴った。



 その声でようやく我に返ったメオラは、「わ、わかった!」と言って駆け出す。



 厨房を通り過ぎて、階段を降りる。


医務室には城に来た頃に一度だけ案内されたことがあるが、場所はよく覚えていない。


焦っていて考えのまとまらない頭で、うろ覚えの医務室を目指して、角を曲がる。



――その先に、見覚えのある背中を見つけた。


 背が高くて、赤い髪の。



 メオラはなりふり構わず、その赤に飛びついた。



「うわっ、なんだいきな――」

「ラシェル!」



 驚いて振り返ったラシェルの言葉を遮って、メオラは叫ぶ。



「お願い助けて! エルマが死んじゃう!」



 それを聞くやいなや、ラシェルはメオラの手を引いて走り出した。