どうやら手伝ってくれるようだ。

メオラは「ありがとう」と再び言って、内心苦笑した。



(わたしとカルの分のカップは、こっそり持っていくしかないみたいね)



 メオラは器にお菓子を移しかえると棚からカップを二つ取って、

「わたし、先にルドリア様のお部屋に行ってるね」

と声をかけると、ジラが振り返る前に厨房を出た。



 ふう、と息をつきながらエルマの部屋へ向かい、その扉をノックする。


「どうぞ」という声がして扉を開くと、寝台に腰掛けて本を読んでいたエルマが顔を上げた。



 テーブルにお菓子を入れた器を置いてから、メオラは二つのカップを寝台の影に隠した。

不思議そうな顔をしたエルマに、「あとでジラがお茶を持ってくるの」と説明し、慌てて扉のそばに侍女らしく控える。

ちょうどそのとき、エルマの部屋の扉を叩く音がした。



「ジラ? どうぞ」



 エルマが応えると、扉がそっと開く。


予想通り、ティーポットとカップの乗ったトレイを抱えて扉の外に立っていたのはジラだった。



 メオラは黙って扉のそばに立ち、ジラが去るのを待った。

仲間はずれにするようでジラには悪いが、やはりアルの者どうしで久々に他愛もないおしゃべりがしたかった。



 ジラはお茶をカップに注ぐと、エルマに一礼して部屋を出て行く。

扉を閉めるときにメオラに目配せをしたのは、おそらく「後はよろしく」という意図だろう。