*3*

 次の朝、エルマは鳥の声で目を覚ました。


起き上がってみると、エルマが寝ている荷馬車の採光窓の縁にすずめがとまっていた。



(朝か)



 エルマは起きあがって伸びをした。

そしてその辺に転がしてあった荷を掴むと、荷馬車から出て朝焼けに目を細めた。



 大きなあくびを一度。


それから野営地をぐるりと見渡して、探していたものを見つけた。



 エルマの愛馬、リアだ。



 アルの民は現在男が三十四、女が四十いる。

持っている荷馬車は十一台。

馬は荷馬車を引くものを除いて六十五頭。

ほとんどがアルの民が各自で働いて、その金で買った馬だ。

荷馬車の用途は商品を積む車が八台、残りの三台は一族共用で食糧、衣類、武器、必要最低限の日用品が積んである。




 野営のとき、馬は周囲の木々の幹に繋いでおく。

栗毛や青毛の馬たちの中で、リアだけは美しい白い毛並みをもつ。

エルマが初めて大隊商の護衛をしたとき、出くわした盗賊をほとんど一人で返り討ちにしたことがあり、リアはそのときの褒賞で買った、自慢の馬だ。