彼はあたしを庇って倒れた
目を閉じる直前に見えた彼の顔は、夢じゃなかった
そして試合は中断し、莉緒を宥めてあたしたちは保健室へ向かった
亜「大丈夫?ごめんね、あたしが余所見したから。」
岺「謝らないで?別にこれは事故だし、僕も莉緒の行動に気を取られてさ?」
やっぱり変だよね、明らかに
さっきも注意されてたし、ぼーっとして上の空で
岺「ま、いずれ解決するでしょ。それより太田さんは怪我ない?」
亜「亜衣李。」
岺「え?」
亜「あたしの名前。亜衣李って呼んで。」
と、少し目を逸らしながら言ってみた
岺「亜衣李、怪我はない?何処も痛くない?捻たりしてない?」
そう彼は言ったのだった
名前を呼ばれた
ただそれだけのことなのに
亜「ありがとうっ.......助けてくれて。名前を呼んでくれて。」
岺「それくらい当たり前でしょ?ほら、泣かないの。」


