心臓の音だけがなぜか冷静な脳内に響く。 顔中の筋肉が固まってしまったみたいに動かない。 わずかな間の後、あたしは足音を立てないように保健室の中に入り、後ろ手に扉を閉めた。 「……ほらっ、もういっちゃったよ」 「シッ。まだ誰かいるかもしれない」 声の主は保健室に入ってきた『誰か』が出て行ったとばかり思っていたようだ。 やっぱり……。その声の主が誰か分かった瞬間、思わずふっと冷たい笑みが漏れた。