「何落ち着いてんのよ!バカイト」
「いいか、よく聞け?俺はカイトであって、バはつかねぇ。それからなんで落ち着いてられるかってのだが、すでに起こってしまったからだ」
「長々と良いわよ。あんたはカイト。…バもつくけどね」
なんかボソボソ言ってやがる。
「なんかいったか?」
「いってませんっ。それよりホラ、早く回収しちゃいましょ」
ミュラは髪の毛をかきあげ、ポケットから取り出したバレッタで止めた。 俺は襲ってきた人間を見ながら、なぜこいつを殺さなくてはならなくなったかを、思い考えた…。
――――…
―――…
『カイト。もう<魂>終わったわよね?』
屋根を飛びながら、ミュラは俺の顔をのぞく。
『ああ。後は報告書書いて終わりだ』
最後の<魂>を回収する人間は、俺たちが行った時、すでに死んでいた。…命尽きるのを待つより、自ら死を招き入れたのだ。 後遺症でおぼつかない手を動かし、近くにあった果物ナイフで首を切って死んだ。
本来なら、俺たちが行って暫くしたら死ぬ予定が、数分早く死んでいた。これはリストのその他欄に記入しなくてはな。
『彼女…死んでいたわね』
『ああ。後遺症のせいで自由に暮らせないのが辛かったんだろう』
ミュラはまたもや、人間に感情を持っている。


