正直言って、内心俺はイラついている。
突然訳の解らない事を口にしはじめたと思ったら、遂には足を止めて仕事を中断しやがる。
「ミュラ、お前は人間になりたいのか?」
「ちがう!」
突然声をあらげた。
「私は人間になりたいんじゃなくて……。ただ純粋に知りたいだけなの」
「何を?」
「…人間の、人生」
人間の、人生…。
深く考えた事は無かったな。ただおおざっぱにいえば、生まれて色んな感情を知り、死ぬ。それだけ。
死神は……?
「死神と人間ってどうちがうんだろうね?同じ、生き物なのに…」
「……それは少しちがう。俺達は生き物なんかでくくっていいものじゃない。…俺達は死神。死を運ぶ神だ」
「あ……」
ミュラはハッとする。私達は生き物じゃない。死を運ぶ、神。死神――。人間たちに死を運ぶ神様。
「解ったか?死神は人間たちにとってはいてほしくない者なんだよ。なんたって死を運ぶ神だからな」
「……そうだったね」
少し納得した顔のミュラ。…<魂>を沢山刈りたいっていたのに、人間の人生が知りたいなんて…言ってることが滅茶苦茶だな、おい。