そうして止まっていると、やっぱり冬は寒いもので、背中がブルッと震えた。

「うぅ、寒い…」

手先とかかじかんでて動きがすごく悪いし、ジンジンして痛い。
やっぱり手袋持ってくればよかった、なんて思いながら手を擦り合わせていると、

「ちょっと、待ってて。すぐ戻ってくるから」

岩崎くんは颯爽とどこかに行ってしまった。

えっ、さすがにここで待機は辛いよ!?
私、ワンピースにコート着てるだけなんだけど…

・・・でも、もう行っちゃったから待つしかないよね。

近くにあったベンチに寒さに震えながら腰かけた。


・・・しばらくして。
さっき岩崎くんが行った方向からこちらに走ってくる人影が。

「ふぅ…疲れた」

岩崎くんだ。

「どこに行ってたの?」
「右手貸して。」

あのー、質問の答えになってないよ…?
と思いつつも、右手を差し出した。
すると、岩崎くんが自分が右手にはめていた黒い手袋を取って、私の右手にはめてくれた。
そして、

「っ!?/////」

岩崎くんの右手に左手が繋がれた。
そしてそのまま岩崎くんのコートのポケットの中に。

「俺の手が、寒いから、さっ///」

ポケットの中がやけに熱いと思ったら、あたたかい缶の飲み物が入っているよう。

・・・そっか、
私のためにわざわざ寒い中これを買いに行ってくれたんだ。


・・・うれしい。
私のためなんかにこんなにしてくれるなんて…

左手に男の人の手独特のゴツゴツ感と、手や心がじんわりと温かくなっていくのを感じながらそっとお礼を呟いた。

「・・・ありがとう」


でもこれじゃあ恋人みたいだなぁ、なんて思いながらも胸を高鳴らせて、美しい光の輪唱の中へと進んだ。