黙っているのは分が悪い。だからと言ってその質問に答えると、本当に今の状態がひっくり返される。 うまく上手く丸め込まれる恐れがある。 「忘れた」 「嘘を吐くときは、」 腕を引かれて振り返った。それを振り払うと、にこりと微笑まれた。 「目を見て言わないと」 負けた。 口を噤む。明日は我が身ならぬ、次は自分。 「朝晩の食事作り、コウヅカの」 「そうなんですか」 「だからファミレスの厨房でも」 知ってる。 これは最後のあがきだ。