「おまえんち、ここの近くか?」
「は?」
「いいから答えろ!
これは一刻も争うことなんだから!」
何よ、この命令口調.
ムカつく.
「そうだよ! ここの近くよ!
それが何?」
「じゃあ今から行くぞ!」
「は? 何で?」
「この子を濡れたまま、家に帰すのは可哀想だろ.
こんなに濡れてるんだから、風邪引かせる気か?」
そうは言っても勝手に家に連れて行ってもいいのだろうか。
探しに来た人がいたら、どうする気か。
下手したら誘拐したと疑われる。
「だからその子をほっとけばいいじゃない!」
「おまえ今それを言うべきことか?
とにかくおまえんちに連れてけ!」
しかしそんなことも考えない彼は、目先のことだけを考える。
「何で? あんたんちに連れて行けばいいじゃない!」
「俺んちはここから15分かかるんだ.
おまえんちはこの辺にあるんだろ?」
ハァ. もう最悪.
何でこんな目に遭うんだろう.
私は少女の方に腰を下ろし、話しかける.
「じゃあ、行こっか」


