「荒れてんなぁ、裕晶君。どうしたよ」
声を掛けられ、廻し蹴りを打ち込んでから声の主に向き直る。
「水城(みずき)さん……」
「何か嫌なことでもあったか?相談にだったら乗るぞ。親父さんに言いづらいことだったら特にな。あ、でも恋愛関係は止めてくれ。結婚もしてねぇ俺に録なアドバイスするこたぁ無理な話だからな」
「父さんにこそ無理ですよ、恋愛相談なんて」
――離婚されたんだから。
それは言わなくてもいいことだから省略し、裕晶は水城から目を逸らす。
水城は、裕晶が幼い頃からジムに通っており、彼にとっては親戚よりも身近な存在でもある。
昔はとある格闘技の世界選手権大会に出場したという噂もあるが、その真偽を裕晶は確かめていないし、訊こうとしないので、裕晶にとっては噂でしかない。ただ、実力者であることは知っている。
長い付き合いとは言え、動きを見ただけでその人の感情を察するのだから、なかなかの手練れと言えよう。


