静かだが、断固とした口調で断言され、とりつく島もないことを匂わせる。そしてゴトウには、強制的にものを言わせる力はない。
「あー、そうなりゃ納得出来ねぇなぁ。そしたら教えてくれるまで纏わり付くしかないんだけど」
「でしたら、私としても手段をとる必要がありますね」
言いながら、少年は左手に持つセカンドバッグから何かを取り出す。それは小さな長方形の紙。何やら見覚えのない文字が書き込まれているそれは、『札』と呼ばれるものだった。
パントマイムで何もない場所に壁があるかのような動作で、少年は札をペタリと空中に貼り付ける。
不穏な様子を感じ取り、口を開くゴトウより先に、少年が一言発する。
「勢迫風走」
聞いたことのない言葉。造語である四字熟語だが、それは所謂『術』と呼ばれるものであるらしい。札から湧き出た風――吹き飛ばされそうな程の風力がゴトウの動きを封じる。


