男子高校生と男子高校生もどき


一瞬の静寂が、辺りを包む。遠くから甲高く響く楽器の音より、しんしんと振り続ける雨音が強調される。


少年がゆっくりと口を開く前に、ゴトウは先に言葉を続ける。


「瑚堂の生徒じゃねぇよな、お前。その学年色は二年のだけど、お前の顔で照らし合わせても該当する奴がいねぇ。念のため、一年と三年を見てもだ。いや、ひょっとして整形して顔を変えた――ってんだったら話は別よ?でも、んな訳ねぇよな」


「そうですね。生まれてこの方、親から頂いたこの顔を変えることはありません。あ、これは整形した方を批判するつもりはありません。人の生き方はそれぞれですから」


「それに関しちゃ今は置いといて、だ。――天ぷら学生って知ってっか?学校の生徒じゃないけど制服着て成り済ますって意味なんだけど。――てわけで、改めて訊くが、お前、誰だ?」


ゴトウだからこそ導き出せる回答に対し、少年はその前に、と一つ問うた。