いつの間にか、彼女達の手が届く距離にまで近寄っていた少年。その彼は、妙な現実離れした雰囲気を醸し出す。
こんな状況の中、どうしてそんなに穏やかでいられるのだろうかと、気にすることは出来なかった。彼女達に不安を与えていた男子生徒の様子がおかしいことに気付く。
「あ、俺、何であんな……」
狐につままれた顔をして、放心したように辺りを見回す。
彼は、先程まで絡んでいた男子生徒と女子生徒二人に「わ、悪い」と謝罪をし、頭を掻きながら友人の顔を見る。
「え?……あ、と。行くか」
翔太の豹変ぶりを目の当たりにし、対応に困る友人ではあったが、この場にずっといるというのも居心地が悪いため、二人はゆっくりと歩き出す。
「えと、何だったんだ……?」
「さ、さあ」
「まあ、いいんじゃない?」
意外な展開に困惑し、互いに顔を見合わせる三人。そんな中、一人の女子生徒が何か気付いたように声を上げる。
「あ、あの人……いなくなってる」
渡り廊下には、立ち止まったままよ二年生三人と、先を歩く二人の男子生徒しかいなかった。


