「おいおま、どうした!?」
「あ、あの……私達、そんなつも――」
必死に弁解しようとするが、相手の「あ"あ"ッ!?」という声と睨みによって口を閉ざす。
どうしてこんな目に遭わなければならないのかが判らない。あまりにも理不尽ではないだろうか。彼女達にとっても、彼にとっても。
泣きそうになる状況。俯きながら視線をあちらこちらへと動かす。そこに、場違いな言葉が投げかれられる。
「こんにちは」
それは、綺麗に磨かれた硝子を思わせる、透き通った声だった。それだけでなく、聞く者を安心させるような優しい声色。この場で聞こえたのが不自然なほどの。
全員がその声の主に顔を向ける。立っているのは、先程まで窓の外を眺めていた男子生徒だ。
左手で黒のセカンドバッグを抱え、微笑を湛えている男子生徒だが、何より彼女達が気になるのは、彼が瞼を閉じていることだ。


