先を歩いていた男子生徒が壁際に寄り、角を曲がろうとした時。同じタイミングで反対側からやって来た生徒と軽くぶつかった。反応は出来たが避けられなかったようだ。
通常ならお互いが軽く謝るか、何事もなかったようにそのまま擦れ違うだろう。少なくとも、彼にとってはそのつもりだった。
しかし、
「あ"?てめぇどこ見てんだよッ」
相手にとってはそうではなかったようで、男子生徒は難癖を付けられてしまった。
「あ、すみません」
「さっさと避けろよ。ひょっとしてわざとか?」
「は?翔太(しょうた)、何でそんなことでキレてんだよ」
理不尽な言い掛かりをつけてくるのは、髪は染めてないものの、ブレザーのボタンを外し、シャツを出した格好の三年男子。
隣にはその翔太の友人と思われる、似たような格好をした男子生徒がいるが、些細なことで怒り出した彼を前に困惑する。
その様子を見ていた二人の女子生徒は、同級生でもある二年男子のことを可哀想に思いながらもその場を無視し、通り過ぎようとするのだが。
「お前ら何見てんだよ?」
彼女達にまで飛び火した言い掛かり。走って立ち去ることも出来ず、二人でその場に立ち尽くす。


