「一体さ、どうしてそんなことを訊くの?あれってそんなに変なことだった?」
「お前が心配するようなことじゃねえって。多分これは俺の問題なんだろうから」
口だけの笑みを見せ、裕晶の疑問を拒むゴトウ。「俺の問題」と言ったが、それは瑚堂学園そのものである座敷童子としてのことなのか。この推察が正しければ、恐らく自分は何も出来ない。そんな予感がした裕晶は、疑問が解消されない不満を内に渦巻かせながら押し黙る。
「んな顔すんなって。解決したら事情はちゃんと説明するから、な」
ゴトウの言葉で、自分の思いは見て判るまでのものだったのかと驚いた。この数日で感情が豊かになったとでもいうのかと、裕晶は自分自身に戸惑いを感じる。
「だからその前に"忠告"だ。何かよく判んねぇがキレやすい奴が多いから気を付けろよ。あ、いや。裕晶だったら心配するのは相手の方になるかな。てわけで、じゃあな」
気持ちを整理しようとする裕晶に、ゴトウがさらに混乱させるようなことを言う。
忠告とはどういうことか。そのことを裕晶が尋ねる前に、ゴトウは手を振りながら教室から出て行く。引き留める暇はなかった。
この日は結局、再び裕晶がゴトウと会って話すことはなかった。


