だが、どういう訳か喧嘩に発展する事態となった。
虫の居所が悪かったのだろうか、立ち上がった生徒は一方的に捲し立て、対する相手は気圧されるだけだった。
クラスメイトも成り行きを見守るしかなかったのだが、事態は急変する。
彼は弁当を食べるのに使っていた箸を一本を手に取り、本来の用途とは違う使い方――凶器として、今まさに振り下ろそうとばかりにその手を上げる。
その様子を見ていた一人の女子生徒が短い悲鳴を上げた。異常事態に気付いた数人が彼を止めようとする前に、裕晶が机の中に入れていた筆入れを彼の横顔に投げ付けた。
思わぬ攻撃に箸を落とした彼は友人達によって身体を押さえられる。
裕晶には関係ない出来事と言えたが、あの様子を見て無関心でいられるほど薄情ではなかった。だから首を突っ込むような真似をした。


